資料NO. :  15
資料名  :  8/27細菌戦裁判報告集会
制作者  :  T.M.(ちば・いちはら連絡会)
制作日  :   2002/09/05

 

日本の戦争責任を追求する細菌戦裁判が,提訴以来5年を経て8月27日東京地方裁判所で判決が言い渡された。判決は,「事実は認めるが,請求を却下する(謝罪も賠償もしない)」という,許し難いものでした。この報告集会が当日の夜行われました。≪写真集はこちら

 原告のみなさんは,口々に怒りを表し,「あきらめずに最後まで争います」と表明していました。
 周洪根氏:「要求は適正なもので,条理が働かないとだめです。」
 張曙氏:「条理が全くないですね。ひどいことをしても謝罪しなくてもいいのは日本政府にしかできないですね」
 陳知法氏:「細菌兵器は最も残酷な兵器だと思います。被害がだんだん拡がります。しかし,責任を持たなくていいということがどうしていえるのでしょうか」
 楊大方氏:「今日の判決で日本に失望しました。120万人の人口で30万人が感染し,5万人以上が亡くなりました。15年戦争で3500万人の命が落とされました。日本は一切賠償しませんでした。被害者に対して謝罪と賠償をすべきです。今日の判決は人間性がありません」
 徐万智氏:「今も細菌戦のことを話すと村の年寄りが涙を流します。日本は,今日の判決から見ると法理もない,条理もない,無責任な国だとしか言わざるを得ません。原告の気持ちをちっとも大事にしませんでした」
 楊万桂氏(常徳師範学院院長):「今日の判決は不公平な判決で,中国の人々が受け入れることができないものです。過去を認めて,中国の人々と共存していくことを望んでいます。生徒には,日中友好していかなければいけないと教えています。しかし,日本政府が過去の侵略戦争を認めていませんから,日中友好にダメージを与えることになります」
 向啓国氏(常徳市人大常委会副主席:「不当判決だが,励まされていることもある。支援する人々の姿を見て,レベルの高い弁護士さんに励まされました。これから控訴します。事実は認めたから,最初の勝利は勝ち取ったと思います」

 集会の始めに,司会者から「今後どうしていったらいいかを考える集会にしていきたい」と訴えがありました。
 開会のあいさつを,ABC企画委員会事務局長の三嶋静夫さんが行いました。
 「判決は頭にきた」心に刻む残念な判決だった。
 「子に孫に引き継いで勝利したい。勝利するまでは死ねない」という言葉がありました。私たちが,この言葉をどう生かしていくのか,中国の人々と共に橋を架けて心を通わせて行きたいと思います。
 事実は認める,しかし賠償は認めないということですから,みなさんと共にがんばっていきたい。とあいさつされました。

 続いて,弁護団長の土屋公献さんが,判決の報告をされました。
 事実は認めるが,却下をするという不当な判決だった。
 法律論で負けたとはいえ,事実関係を認めたと言うことは,国側はこの点を控訴審で覆せない。被告は,事実関係について最初から最後まで沈黙した。従って,事実関係は国の認定として公式に確定する。事実認定がされたと言うことは大きな意義を持っている。
 法律論の部分で言えば,国を勝利させようと思えば,どんな法律論も使える。先に結論ありきである。使い古された法律論で,私たちはこれに対して,十分な反論をすることができる。
 例えば,判決は,ハーグ陸戦条約3条の国際慣習法に基づく損害賠償は個人として相手国に直接請求する権利は国際法上認められていないと述べているが,勝利した判例が幾つもある。反論が可能。
 この裁判で特に力説したのは,条理を裁判所は使うべきであるが,成り立っていない。古今東西争うことのできないことについても,条理で争うことができる。
 日中平和友好条約で,中国が戦争賠償権を放棄したが,個人がこうむった被害まで放棄したものではない。これを無視した判決で不当。謝罪と賠償なくして,真の友情関係をつくることはできない。
 事実関係については,勝利しているから,法律論で立派にあらそって勝利したい。と話をされました。
 
 集会は,さらに松村高夫慶応大学教授の講演,中国訪日団からの発言があり,最後に相模女子大学教授の吉田義久さんからまとめと閉会のあいさつがありました。
 吉田さんは,次のように語られました。
 判決に怒りをもって弾劾したい。中国の人々に充分報いることができなかったことにお詫びしたいと思います。
 細菌戦の被害者は,日本の侵略戦争と闘った人たちである。そのことをとらえかえす必要がある。中,日の民衆が,これから日本の侵略戦争と対決していこうとしていることは,重要な意味を持っている。不当判決は,(国家権力が)強いから出したのではなく,そうした判決を出さざるを得ないほど弱い存在だということです。
 これから戦争を始めようとしている中で,過去の戦争責任を認めるわけにはいきません。有事法制は,侵略戦争のための,日本の民衆を侵略戦争に動員することが目的です。
 被害者の戦後補償を実現していかなければなりません。それは,有事法制との闘いの一環です。
 今日から新しい闘いを構築していく必要があります。日本の反戦運動とドッキングさせて戦い抜いていきたいと思います。

 この裁判のおおまかについて,ビラより抜き書きすると,次の通りです。
 日本は,1940年代,731部隊や1644部隊を使って対中国侵略戦争の中で細菌戦を実行し多数の中国民衆を虐殺しました,細菌戦の残虐さと非人間性は言うまでもありません。当時すでに細菌兵器の使用は,国際法で禁止されていました。しかし日本は,今日まで,細菌戦という重大な戦争犯罪を犯した事実を一度も認めていません。
 いま180名の中国の細菌戦被害者が裁判で日本国に謝罪と損害賠償を求めています。
 5年間の細菌裁判では,31名の原告が法廷で細菌戦の残虐な実態について述べ,さらに11名の歴史か・細菌学者・元731部隊員などが貴重な証言を行いました。
 私たちは,裁判所が細菌戦による重大な人権侵害を認定し,中国の細菌被害者に対し,謝罪と賠償を命じる正義の判決を下すことを求めています。ということです。

 この裁判を支援している人たちに学び,日本政府の細菌戦の責任を追及する運動をつくっていきましょう。

 細菌裁判の詳細は次のHPを見てください。
731部隊細菌戦国家賠償請求訴訟ホームページ
 http://www.anti731saikinsen.net/

                                                      

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掲載:2002/09/14